ホーチミンの空気

初めての外国はベトナムだった。

10年以上も前になってしまった。

 

ホーチミンの上空をだんだんと降下して、街が見えてくる。

平坦で、オレンジで、薄汚れた街並みが見えてくる。

まるで日本とは違う景色。

 

飛行機が空港に着陸し、ドアが開くとそこはもう外だった。

南国のむっとした空気に包まれた。

同じ地球上の、でも、気候も文化も歴史も言葉も何もかもまるで違うその国の

空気ってどんなにおいがするのかな。

鼻からいっぱい吸い込んだ。

まるで宇宙にきたような、そんな未知の世界で空気があることにも驚いているような

そんな気分だった。

吸い込んだ空気は、少し違うけど、やっぱり同じでもあるようなきがした。

 

空港を一歩出ると、突然、目の前に広がるホーチミンの夕方の喧騒。

全体にゆるい。

まるで違うはずなのに、なぜだろう、心の一番下の方がきゅうんとした。

子供のころにみた、街角の風景になんとなく近いものがあるような気がした。

道端でしゃべっているおじさんたちは、

日本にいる休日の近所のおじさんと変わりないような気がして、

少しだけ、外国へ来たという緊張がほぐれたような気がした。