やさぐれホームステイ

イギリスへ興味を持ったキッカケは、

子どものころ、ピーターラビットが好きだったこと。

絵本に出てくる世界へ行って見たかったし、

不思議の国のアリスのお茶の時間も魅力的だった。

ロックもアメリカンよりブリティッシュだった。

 

最初はお試しで一か月の短期留学をした。

一般家庭でホームステイをして、語学学校へ通うというもの。

 

私がホームステイをした家庭は、30代中頃の夫婦と、1歳くらいの男の子が住む

ロンドン西部のお宅。

東京の地図で当てはめて考えるとたぶん三鷹あたり。

学校は中野あたり。

バスに乗って、ずーっと走って周りのネオンが減りだして住宅地になるころに着く。

ロンドンと東京は地図で見ると構成がわりと似ている。

とくに電車の路線図は山手線や中央線に該当するものがあって面白い。

 

その家の二階の一室を借りていた。

広い部屋にダブルベットとキャビネットと机。

窓からは庭が見える。

 

ホームステイ先の家族とはコミュニケーションをしっかりとって、

家族のように接するようにしましょうと留学斡旋会社の人にも言われていたし、

イメージ的にもそんなフレンドリーな、あったかいものかなぁとも

思っていたが実際は違った。

完全にその家で私は他人で、食事はいつも独りぼっちだった。

リビングで会話しようとしてもある程度すると早く部屋に戻れオーラが出てきて

10分ほどいるだけで基本いつも自分の部屋にこもっていた。

さっさと寝て、早く起きて、家族が起きてくる前に食事をし、家を出た。

そしてこの食事がひどかった。

冷凍食品を皿に並べてチンしただけのもの。

自分で作りたいと思った。バカにするな、と。

ある日ちらっと見ると家族はまるで違う、グレードの高いチン料理を

楽しそうに食べていた。

 

語学学校で同じクラスの日本人とホストファミリーの話になって聞いてみると

どの家庭もなかなかひどかった。

そこで知ったことは、好意で面倒みるというよりは、家計の足しにしたいという思いでやっている家庭が多いらしいということ。

だから無駄に話したくはないし、食費もなるべくなら抑えたいのだ。

そうして入れ替わり立ち替わりで受け入れているから、

滞在先の家族に渡そうと母と用意した日本グッズも

もうなんにも珍しくもうれしくもなかったのだ。

 

そうと知ってしまえば逆にラクになって、食事する機会もぐんと減り

家にもほとんど寝に帰るだけ。

まるで反抗期の高校生みたいな生活にしたら

家族たちもうれしそうだった。

 

この一か月の経験のおかげで二度とホームステイなんかするもんか。

来るなら自炊できるだけの金と度胸を作ってまた出直しだい!と

帰国したのであった。