さよなら、妖精フンゲ

人間の赤ん坊とはいえ

最初っから人間かといえば

わたしには人間には見えなかった

かみさま?

ようせい?

そんな神々しい存在

 

視力のまだ弱い目に一体何が映るのか

じっと目をみつめられて

我が子ながらそらしたくなるほど

ドギマギする時もあった

全てお見通し?

 

 

 

ぼうやが産まれる一年前

従姉妹に子どもが産まれた

その産まれたばかりの赤ん坊を抱っこして

その不思議な目に吸い込まれそうになった

 

わたしのところにも

君のお友だちを呼んできてくれないかな

 

そうお願いした2ヶ月後

ぼうやが私のお腹の中にやってきた

 

10ヶ月後

産まれてきたぼうやと病院のベッドで眠る パチリとひらいた真っ黒な目

じっとみつめてくるその目

まるで宇宙が広がっているかのような闇

そのまま包み込まれてしまいそうな

不思議な気分

 

毎日毎日

ずーっと一緒にいる

ぼうやとわたし

当たり前なんだろうけど

こんなに多くの時間を共にすごしたことがある人は他にただひとり

そう

わたしのおかあさん

 

おかあさんとすごした日々以来の

ぼうやとわたしの濃密な毎日

 

 

神々しいと思っていたぼうや

最近、その神々しさは薄れてきた

ひとりの人間らしさが宿ってきた

意思がある

目に魂が宿っている

 

もう瞳の奥に宇宙は見えない

はっきりとぼうやの目になった

 

ふんげ

は、あやしたときに笑いながら発する言葉

指をしゃぶって

ふんげと言いながらにやりと笑う

 

そのうちそんなふんげも言わなくなっちゃうんだなぁ