ごはんをもりもりたべている

助産院の二階の、一室にて。

4.5畳ほどの和室に布団が敷いてあり、開け放たれた二つの窓と出入り口のドアから気持ちのいい風が流れていく。

ウトウトするとここは実家かと錯覚を起こすが、あ、違うわと目覚める。

私は出産してまだ入院してるんだった。

 

とある日の深夜に女の子を出産した。

 

 全身全霊でお産したらなんかもう私はしおれちゃって、ただ横で眠るしわしわの赤児がかわいいということしかわからなくて、それ以外のことは頭まわらなくてひたすら布団で寝ている。

  

寝ているだけでも、不思議なもんで腹は減る。

 

朝7:00

昼12:00

夜6:00

 

三食運ばれてくる食事が楽しみで仕方ないほど、お世話になっているこの助産院のごはんがおいしい。

うまい!でなくて、あぁ…おいしい。

優しく身体に染み渡っていくおいしさ。

 

白いごはん、味噌汁、おひたし、サラダ、魚の主菜、乾物の副菜

などの特別なものじゃないんだけど、どれも本当においしくて、私が家で作るものとは全然違う。

おひついっぱいにもられるご飯、こんなに食べれるの?と思いながらも毎食完食。

 

きっと出汁がいい。

素材もいい。

朝ごはんに出たアジの干物は身がふっくらしていてお箸で簡単に身がほっこり取れる。

そうして口に運ぶと柔らかくってパクパク次が進んじゃう。 

 

普段料理を写真に撮ることはないのだけど、帰ってから家の食事にもぜひ取り入れたくて毎食写真に撮って、手帳にも献立を書き込んだ。

乾物を豊富に使っていて、これも真似したいポイントだ。

 

 

美味しいご飯を食べては寝て、お乳をやって、寝て。

また食べて、寝て、お乳をやって、寝て、、、を繰り返す。

 

 

 

しかし、人間とは贅沢なものであんなに美味しいと思っていた食事が進まなくなった。

壁に向かってただひたすらに食べることが寂しくなって、面倒になって、コーヒーが飲みたくなって。

壁向いて一人で食べんならコーヒーとパンでさっさと終わらせてもいいやと

入院三日目の昼に思って、その食事は食べるの辛くなった。

頑張って食べ終えて、その後布団にゴロンとなって、少し泣いた。

 

おかしいなと調べてみると、産後三日目くらいはホルモンバランスで一時的に落ち込むことがあるらしい。産後あるあるなのかと思ったら深く考えるのはやめようと気を直し、

その日の夜ご飯にはまた美味しく食事をいただけた。

 

 

考えたって仕方ない。

美味しく頂く、それが大事。

 

最後の祝膳

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