見られると止まる陣痛の不思議

 

妊娠中にこんなことを感じていたが、陣痛でもこんなことが起こった。

 

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練習したてのカーシェアを借りて、慣れない道を走り助産院へと向かう。

地理に弱い夫に、カーナビとともに私も道を教える。

その頃から薄々感じてはいた。

陣痛が弱くなってきているのである。

 

騒ぎすぎたか?

しかしもう後戻りなどできない。

 

助産院へ到着し、このまま入院することに決まった。

出産に立ち会えない夫と息子と涙の別れ。

 

母ちゃん、頑張って産んでくるからな

父ちゃんをよろしくね。

息子と二人で楽しくね。

3人抱き合い、サヨナラをした。

 

サヨナラしたのだから、なんとしても産まなければ。

なんの根拠もないが、近いうち出るだろうなという感覚はしっかりあるのだ。

 

じゃぁ、スクワッドでもしてみますか!

助産師さんに言われて

教わった通り、真面目に取り組む。

ボートを漕ぐ動きがお産を進めるのに効くと言う事でやる。

 

10回漕ぐと、ツーンと痛みがくる。

しかしすぐ止む。

また10回漕ぐと、ツーンと痛む。

上手ねーなんて褒められたりして、嬉しいのかどうかもわからないがありがとうございますと言いつつ、私は漕ぎ続ける。

助産師さんの視線が痛い。

プレッシャーだ。まずい。

痛みよ、来てくれと願えば願うほどなくなる痛み。

痛みが欲しくて一生懸命ボートを漕ぎ続けるが、なくなる痛み。

一時間ほどこいだだろうか、とうとう痛みは起こらないまま

ただ単純にボートを漕ぎつづけて疲れてしまった。

息が上がっただけになってしまった。

 

見かねた助産師さんが少し休む?と声をかけてくれたので、

ええ、ちょっと一人で寝てみます。

しょんぼり自分の小部屋へ戻っていった。

陣痛起こせなくてすんません、、、騒ぎすぎたかもしれません、、、

そんな気持ち。

 

 

しかし名誉挽回とばかり、一人で部屋にいるとむくむく起こる陣痛。

 

21時布団にゴロンとしてむむ?痛い。

そのまま10分おきに続く痛み。

痛みを感じつつまどろみ。

0時を回る頃、とうとう一人では耐えられない痛みになって助産師さんを呼ぶ。

痛みが来ているときに体を摩ってもらうと安心感とともに痛みが和らぐ不思議。

一人だとどうしていいか分からなくてアガアガ言っちまう。

摩ってもらったり、一人で頑張ったりして一時間半ほど経った頃ポクっと寝落ち。

嘘みたいに安らかに深い眠りに落っこちた次の瞬間、グワーンと強い痛みが来て

出るー出ますー!!叫ばずにはいられない。

 

そのままバタバタと助産師さんが準備をし始めて、いつの間にか二人になってて

出るーって思ってから30分後に出た。

 

出たと思ったらものすごく手際よく後片付けが始まって、

ハイハイお疲れ様でした。ゆっくり寝ましょうねと私も娘も寝かされて

さっきまでのことが嘘みたいに部屋は静まりかえった。

 

薄暗い天井を見つめてふと、無事に産めて良かったなと思った。